揺さぶられっ子症候群

「揺さぶられっ子症候群」(Shaken Baby Syndrome :通称SBS)

という現象をご存知でしょうか。

 

乳幼児などの、まだ首がすわっていない児童激しく揺さぶられることで、

眼底出血

頭蓋内出血

脳機能・運動機能障害

などの、深刻なダメージを追ってしまうことを指します。

今回はこのSBSについて少しお話させていただきます。

 

 

SBSは、70年代から米国で報告され始め、

80年代からは、外部からの強い衝撃によって症状が見られることから

児童虐待の指標と考えられ始めました。

 

米国では、

・直接的な殴打を避けて肩をつかんで前後に揺さぶる躾を頻用すること

・内出血のため発見が遅れると致命的なこと

などから、

痣などの「外表の傷」よりも

このSBSが指標として判断しやすかったためです。

 

 

日本でも、

21世紀から母子手帳に項目として記述されており、新生児を過度に揺することの危険性を訴えています。

 

・揺り籠や首を支えた状態

・運転中のチャイルドシートにおいて、適度な速度・時間で揺すられた程度

といった軽い揺さぶりくらいでは生じにくいですが、それでも新生児の体は脆いので注意を要します。

 

 

そしてこのSBSには、もう一つの問題があります。

それは、

SBS=児童虐待

という一部誤った構図です。

 

冒頭であげたような親の過失がない場合でも、

転倒・転落によってこのSBS様の症状が生じることがあります。

 

そのときに親が適切に病院に連れて行ったり、

または気づかずに第三者が症状を発見して搬送した折に、

病院にて児童虐待を疑われることがあります。

 

保育施設などからすると、虐待の可能性を考慮しなければなりませんので、一時預かりなどの行政措置をとらざるを得ない場合もあり、警察沙汰になることもあります。

 

これらの措置については、行ってしかるべきだと思いますし、万が一児童虐待であれば介入することで子供は救われるかもしれません。

 

しかし、実際には虐待ではなく全くの「事故」であった場合、

親子の関係を離してしまうことになります。

これがSBS=児童虐待という構図の問題となります。

 

 

最悪のケースとして、新生児死亡時では、親が殺人犯のように扱われかねなのです。

虐待が無かった、と証明するのはとても難しく、時間のかかることでしょう。

 

 

またこれらのことから、SBSをおそれての過度な育児不安、親戚や保育施設に子を預けることへの不信などを誘引し、社会問題の一つと言えます。

 


過失がある場合もない場合も、親子にとって深刻な影響を及ぼします。

 

児童虐待を見極め子供を守るためのSBS報告が、親子を傷つけてしまうことがある

 

という現状の改善には、SBSの認知向上と共にその信頼性についても慎重に考えていかなければいけません。