恋文

わざわざ「恋文」と書くと、思いのほか趣が感じられます。

 

恋文は、別名として

付文、艶書、艶文などありますが、

ラブレターというのが現代では最も一般的ではないでしょうか。


どれも、意中の人へ愛を告白するための手紙を意味します。

面と向かって言えない場合や、文章によって伝えようとする場合に用いられます。

 

学校では、

ロッカーや机の引き出しに入れるというシーンが

よくテレビで見られますね。

自分も、若いころは下駄箱に入れてもらったことが実際にありました。

 

今回は、そんな恋文について、少しお話させていただきます。

 

 

日本では古くは「懸想文」といわれ、

これは和歌に仕立てた恋文に、関連する物品を添えて、人づてに渡す

というものでした。


これに関連して

「懸想文売り」

というのも存在していました。

 

正月初めに、懸想文を梅の小枝にさして売り歩く行商人のことで、

実際には縁起を祝う文をしたためており、良縁祈願のお守りのような役割だったそうです。

 

 

また、そんな恋文にも、大学生ではありませんが、代筆があったそうです。

達筆であったり文才のある人に代筆を頼み、よりよい結果を期待するのは、ひたむきな思いが感じられます。

 

そして、古くでは文盲の方も少なからずいたため、

このような方が、遠方へ想いを届けるために代筆を頼んだ

というケースもあります。

 

 

また、恋文を使った面白い話がありました。

昔、忍者が敵の屋敷に忍び込むときに、見回りの者に見つかってしまった場合

「屋敷の娘に、主から託されたこの恋文を送ろうと周囲をうろついていた」

と言いながら懐から、用意していた偽の恋文を見せたところ、

通用したそうです。

 

貴族間での恋文のやり取りは、そこまで浸透していたのですね。

 

 

現代でも、

「恋文」という単語は曲や文学作品のタイトルによく使われます。

それだけメジャーな単語のわりに、実物はあまり見たことがない

というのもこの単語をより特別にしているのかもしれません。