鴨川両岸の桜並木も盛隆としてきました。
今週は良い花見期間となっているかと思われます。
そんな桜ですが、毎年桜前線として全国各地で南から北へ順々に開花していく様子が発表されています。
今回はこの桜前線について、ソメイヨシノという品種の経緯と共にお話させていただきます。
今日本全国の河川や公園で見かけられ、「花見」の対象となっている桜は、
ほとんど全て「ソメイヨシノ」という一つの品種です。
エドヒガンザクラ(母種)とオオシマザクラ(父種)の交配によって生まれたこのソメイヨシノは、染井(現在の東京都豊島区あたり)の植木屋が「吉野」という名で売り始めたことが記録されています。
奈良吉野山のヤマザクラ(野生)との混同を避けるために、後に「染井吉野」となりこれが現在の名前に通じています。
なぜ染井で栽培されていたはずのソメイヨシノが、
現在全国的に栽培されているかと言うと、それは全て人間の手による
「接木」や「挿し木」が行われたためです。
ソメイヨシノは、自身だけでは増えることができない栽培品種であるため、このような栄養繁殖を必要としています。
一方人間も、この美しい品種を残し、広めていくために積極的に接木を施していきました。
共存関係とも言えるのかもしれません。
このように全国のソメイヨシノは皆クローンであるため、同一条件(温度や日照)であれば一斉に開花します。
これは野生の植物よりもより顕著に見られます。
春が近づき、南から北へ徐々に開花の閾値温度がやってくるため、桜前線がきれいに描かれているのです。
桜というと、昔ながらの日本の風景の一つとしてよく挙げられますが、
あの桜並木はかなり人工的な風景だったのだな、と思うと何かうすら寒いものを感じてしまいますね。
また同時に、美しい風景を残したいという人間の欲と、それを上手く利用した桜の生命力も感じられました。